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“Frank Yoshida”作、中編ラブロマンス小説『離れられなくなっちゃう』が、goodbook社主催《出版登龍門》でグランプリ(大賞)を受賞!


「ハグル」(44)〜最終面接〜

「お疲れ!」。麻希子の家の玄関前、ヘルメットを脱ぎながら、商が言った。
 相手が女子高生とあって、彼女が住む塚口の自宅まで、かなりアクセルを吹かしたが、その甲斐あって予定より30分ばかり早く着いた。
「先生、それ、仕事みたいよ」
 麻希子が冗談っぽく、商をからかった。
 おやすみの挨拶のつもりが、そう聞こえたのかもしれない。
「―だね。じゃ、“また来週の火曜日に”はどう?」
「そうね」
 麻希子が脱いだヘルメットを商に渡した。
「お母さんは?」
「今晩は夫婦むつまじく、外食するって言ってた」
「仲がいいんだね」
「……」
 麻希子のヘルメットをリア―シートに固定する商。暫く二人に沈黙が続いた。
「麻希ちゃん、大丈夫? 家の中真っ暗だよ。ご両親が帰られるまで、応接間で待ってあげようか?」
「…二人っきりになっちゃうよ、先生」
 言葉に詰まった商は、業務的な口調で自らをごまかした。
「鍵を貸して。中の電気を点けたげるから。―僕が見て大丈夫だったら、中に入っていいから。後はしっかりと鍵を掛けとくんだよ」
「心配性ね、先生。大丈夫よ。慣れっこだから」
 二人は中に入り、商が全ての部屋を点検した。
「OK!」
「じゃあ、先生。おやすみなさい!」
「あ、おや―」と商が返事をしかけた時、麻希子が遮った。
「先生、頬っぺたに何かついてる」
 麻希子が顔を近づけた。
「おやすみなさい」。麻希子の柔らかい唇が、商の頬に軽く接触した。
「締めるわよ、先生!」
 麻希子が追い出すように、玄関から商を押し出した。
 商の心の空隙にスーと入ってきた麻希子。
 その麻希子との出会いが、生死を賭けたミッションを模索する商に、新たな生きがいを与えた。
 家路へと向かう商の眼前を左右に通り過ぎる街灯。麻希子の笑顔が、時折脳裏を掠め、新たな旅路への鼓動が商の心の中で、心地よく高鳴り始めた。mensetu.jpg

 翌日、商は予定通りフランキスタ外語学院の最終面接に臨んだ。
 別日で1次・2次試験を通過した受験者も併せて男子1名、女子17名の計18名全員が、集合時間の1時半には控え室で待機していた。
 商が面接室に入ると、ネイティブ1名と日本人1名が試験官として正面に座っていた。日本人は最初の挨拶だけで、後はネイティブが矢継ぎ早に質問をした。
What are your strengths and weaknesses?(あなたの長所と短所は?)」
 この手の質問に慣れっこになっている商は、いつものように短所から話し始めた。
Well, let me tell you my weaknesses first.(先ず短所から話させて貰います)」
 短所を最初に話すのは、商の作戦で、後で長所を言うことによって、試験官に良い印象を残させるためである。
 商が時間管理等の長所を説明し終えると、ネイティブスピーカーが、「Sounds good to me.(なるほど)」といって、笑顔を返した。
 ほんの十数分で面接が終わった。結果は1週間以内に書面で知らせるとの事。無難にこなした商は、昨日のツーリングの疲れもあってか、3階の喫茶室でコーヒーを飲んでから帰ることにした。
 喫茶室の隅に座り、商はフーッと息をついた。
 暫らくして、スタッフだろうか、男性2名が喫茶室に入ってきた。仕事の話を終えて一段落したのか、二人の会話は講師の話題へと移った。
「長万部先生は、本当、人気があるな。TOEICの勉強といえば、長万部先生を指名するビジターが後を絶たないくらいだ」
 商は自分の耳がまるで馬の耳のようにぴんと立つのを感じた。

(つづく)

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テーマ:連載小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2006/08/22(火) 00:53:24|
  2. 「商社んく(連載)」

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