翌日、正午前。「道街さん、3日間なら何とかなるか?」
総理官邸で商が訊いた。
「総理、療養ということでメディアの方には伝えておきます。閣僚の方は、全く心配要りません。文句を言う奴は即刻首にします」
新ポストの国防大臣に就任した道街が、キリッとした眼で商に答えた。
「すまない」
「とんでもないです」
「奴だ」
「―ですね。裏は取れました。ドンラト―バのバックアップは、公安の特殊工作員がやります」
「絶対に前面に出ないように言ってるね? 狙撃手を公安から遣したとなれば、
政府のダブルクロスだと嵌められるだけだから」
「大丈夫です。全て精鋭の特殊部隊です」
「そういう問題じゃ―」
「分かってます」
それでも商は不安に感じた。
麻希子の救出にはどんなミスも許したくない。
官邸の窓に強い日差しが入り始める。
道街のCBに連絡が入った。
「了解。…総理、時間です」
リムジンとRV車が官邸の前に停まった。
リムジンに乗り込んだ商は、同乗するドンラト―バの
諜報員3名に一礼したあと、厳しい口調でこう言った。
「
Don’t let me down, OK? しっかりやってくれよ」
特殊工作員が乗ったRV車がリムジンに続く。
何十分走っただろうか。前夜、一睡も出来なかった商が、「タッド!」の声に目が覚めた。
羽田の駐機場が眼の前に飛び込んでくる。
大型の輸送機がスタンドバイしている。
リムジンとRV車が躊躇無く乗り込む。
澄み切った空を突き破るように、ジェットエンジンが回転を増す。
リムジンに連絡が入った。
「FL in JM, got that? Para urgently!」
ドンラト―バの
諜報員が、厳しい眼差しで商に合図を送った。
FLはファーストレディー、商の妻麻希子。JMはマレーシアのジョホルバール、Paraはパラシュート。即ち、麻希子はマレーシアのジョホルバールに拉致されており、即刻、落下傘部隊で救出要との連絡である。
ミスが許されない一発の勝負。
「
Tad, don’t worry. We’ll all risk our lives.」
現地の
諜報員から力強い言葉が帰ってきた。
歯を思いっきり食いしばる商。
金切り音とともに商一行が乗った輸送機が、西の空に消えていった。
(つづく)
テーマ:ミステリ - ジャンル:小説・文学
- 2007/03/07(水) 23:40:59|
- 「ハグル」(連載)
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